【宿泊業が危ない!?】宿泊業の生産性を向上させるためには?事例集とともに解説

ホテルの建設と反比例するように年々人手不足が懸念される宿泊業界。

少ない人員で長時間働くことで、従業員の定着率が低くなる他、現在働いている従業員への負担も大きくなり、離職率が上がることも少なくありません。

そのため現在は、定着率のアップを図るとともに、従業員の満足度を上げるために宿泊業における生産性を向上させることが必須となっています。

そこで今回は宿泊業の生産性を向上させる方法を事例集と併せて紹介していきます。

 

中抜け勤務の解消

中抜けの時間帯に付加価値を生む仕事を作る

宿泊業の特徴的な働き方として中抜け勤務制度があります。

1日の労働時間は主に8時間前後ですが、その日の勤務がお客様の朝食時間前から始まり、終了がお客様の夕食時間後となります。

中抜けの休憩時間はあるものの、他の産業と比べると始業時間が早く終業時間が遅いのが特徴です。

そのため、中抜け勤務制度で働く接客部門などの方々は仕事と生活の時間帯が宿泊業以外の方とは異なることから家族や友人とのコミュニケーション時間が阻害されます。

これは宿泊業界で働くことの選択を軽減する一つの要因となります。

従って、早番・中番・遅番等に分けて交代勤務制度を取ることが必要になりますが、チェックインからチェックアウトまでの時間帯はお客様がいないため、単純に人を配置すると無駄が発生することになり、生産性が悪化します。

しかし、中抜けの時間帯に付加価値を産む仕事を作ることで時間の無駄を省くことができます。

例えば、宿泊客がいない時間帯に誘客を図り、昼食サービスや日帰り入浴サービス等を提供することできます。

宿泊客がいない時間帯でも利益につながる仕事をするわけですから、生産性を悪化させることなく、中抜け勤務制度を見直すことができます。

 

マルチタスク化

中抜けシフトは、マルチタスク化によっても改善することができます。

マルチタスク化は多くの場合、業務繁忙時のスポット応援制度として実施されていますが、ここでいうマルチタスク化とは、抜本的に役割分担、及び組織体制を見直すことです。

多くの旅館ホテルではフロント係や接客係などの機能別体制を取っています。

それゆえ、接客係はお客様のいない時間帯仕事がないため、長時間の休憩を取る必要があるわけです。

これに対してお客様がいない時間帯の仕事を組み合わせたマルチタスク化が実践できれば、長時間休憩を取る必要はなくなります。

中抜けシフトがとりわけ多いのが接客部門。

中抜け勤務

接客・フロント・内部をサービス部として統合し、マルチタスク体制を作ることで、各人が複数の業務を行うことが可能になり、柔軟なシフトを組むことができます。

例えば、チェックインからチェックアウトなどの時間帯は接客サービスが手空きになるので、その時間帯に忙しくなる客室清掃を日常業務として行うことができます。

中抜けシフトを改善することで、従業員満足度や部門間コミュニケーションの向上につながる他、定着率にも寄与します。

 

人手不足の解消

客室整備作業の廃止・見直し

人手不足に悩まされる宿泊業界。

そんな中でも、作業改善や標準化を図ることで人手不足を解消することができます。

まず、客室業務のどの作業にどれくらい時間がかかっているのか業務を細分化し、各項目ごとに作業時間を計測し、一人でより多くの仕事ができる体制を整えることが大切です。

また、清掃などは指導の段階で口頭で伝えるため個々によってバラツキが出てきてしまいます。

そこで、客室の清掃業務のマニュアル化をし、その部分を標準化することによって清掃レベルの一定化と時間短縮を図ることができます。

無駄を省かなければ労働生産性は上がりません。

お客様アンケートなどを分析しながら、サービスの充実と客室作業の充実を両立するにはどうすればいいか考えましょう。

例えば使用頻度の少ないきゅうすを置くのをやめお茶パックに、部屋の資料を極力少なくするためWi-Fiの案内はドアに貼る、アメニティーコーナーはお客様が選択して使えるようフロントの脇に置くなど、工夫できることは様々です。

 

マニュアルの動画化

新人スタッフ育成は細部にわたって指導する必要があるため、どうしても時間がかかってしまいます。

そのため、指導者の拘束にかかる時間が問題となっています。

そこで、新人作業にかかる時間を短縮するため、マニュアルを動画化することを提案します。

紙媒体を廃止し、接客スタッフの一連の流れであるチェックインから部屋へのご案内、食事のセット、提供の仕方などの動画マニュアルを制作しましょう。

動画を取り入れたマニュアルを作ると習熟度が上がる他、業務のスタンダードを見直すことにもつながります。

YouTubeで動画を限定公開するなどし、必要な時必要な場所で確認できるようリンクを共有しましょう。

目で文字を追って自分のものにするよりは視覚で入ってきたものを覚える方が早く、業務の効率化に繋がります。

業務を習得するにあたっては、早く習熟できる人とそうでない人の差が大きいですが、動画マニュアルがあれば誰でも自宅でも予習・復習をすることができます。

また、動画マニュアルは新人教育の時間短縮だけでなく、旅館全体の業務の標準化、質の向上に繋げることができるはずです。

 

IT化・機械化・道具化

IT化・機械化・道具化によっても人手不足解消を解消することができます。

IT化というと難しい、費用対効果が感じにくいなどの問題がありますが、実際のところそんなに難しく、費用のかかるものだけではありません。

例えば、フロントとパントリー間での連絡が滞っていた場合、タブレットを活用した顧客状況の共有をするだけでも大きく時間を短縮することができます。

内線電話を使ってフロントから電話するか、パントリーから確認の連絡をするという方法もありますが、フロントがお客様対応に忙しい時は電話に出られず、客室係がフロントまで行ってお客様が退出された部屋を確認する必要があります。

しかし、タブレットとラインの活用をすることで、フロントがお客様がチェックアウトした時にラインへ部屋番号を入力することで、その部屋番号は各階のパントリーに置いてあるタブレットに送られます。

客室係はラインをチェックすることで効率的に客室作業に入ることができ、また、客室係が確認したものは既読となるため、フロントでも送った情報が見られたかが確認することができます。

ラインは難しいツールでないので定着しやすいというメリットがあるほか、導入費用はタブレット購入費のみと小さな宿泊施設でも手を出しやすいIT化となっています。

 

価値の見直し

付加価値をつける

お客様の目的は宿泊だけではなく、その地域を楽しむことも含まれています。

従って、外部資源と提携した付加価値向上を加えることで新たな客層を掴むことができます。

顧客層や集客状況、そのお客様にお応えするためのプランの有無を確認し、地域の観光資源や、お客様が何を求めてくるのかを見直し、旅行客の多い観光地を絡めた商品を作ることが大切です。

例えば、バスツアーを組み合わせた宿泊プランを作り、ホームページなどで告知していくことで地域と一緒に魅力を発信していくことができます。

更に、お刺身をグレードアップさせたり、ケーキの特典などを盛り込むことで新たな客層の開拓にもつながります。

また、プランの紹介では写真を多く活用し、旅館での生活をイメージしやすいようにすることが大切です。

今まであった商品をちゃんとお客様に見える形で提供しましょう。

今までやってきたこと、今まで取り組んできたことにどれだけ付加価値をつけられるか考えることで宿泊施設の生産性もアップします。

ターゲット・ポジションを明確にする年々増え続ける宿泊施設。価格競争の激化に巻き込まれれば、体力のないところから潰れていきます。

そのため、ターゲット・ポジションを明確にし、価格競争を避け、客数・客室単価アップを目指すことが重要です。

改めて自分の宿泊施設の魅力を見直し、ポジショニングを考えなければいけません。

例えば、大きなお風呂や露天風呂などの設備は、強豪のビジネスホテルにはないため大きな武器となるでしょう。

5000円以下じゃないと泊まらないよ、というお客様もいれば、逆に5000円以下の安いところになんて泊まらない、ちょっと良いところに泊まりたいというお客様も存在します。

お客様のニーズを考えて価格帯やマーケティングを変えていきましょう。

他にはない独自の魅力を打ち出し、どのお客様が対象のお部屋なのか分かるようにすることで、お客様もホテルを選びやすくなります。

 

まとめ

宿泊施設が次々と建設される今、生産性を向上させることが生き残るための鍵となっています。

生産性を解消するためには、中抜け勤務を見直し、作業の見直しやIT化を図り、付加価値を向上させていくことが重要です。

宿泊施設は、今抱えている問題点は何なのかを明確にし、改善して向上させることで、生産性をアップし、従業員の満足度を上げ、新たな客層を掴むことができます。

売り上げに伸び悩んでいる方はこの記事を参考に現状の打開を図ってみてください。