最近よく聞くスマートロックとは?種類ごとに特徴や価格感を解説

インターネット上で鍵の発行や受け渡しができる「スマートロック」をご存じでしょうか。

スマートフォンから鍵を開けられ、鍵の持ち歩きが不要になることから、自宅での利用が広がっています。さらにその勢いはホテルやスペース貸しなどのビジネスシーンにも押し寄せ、急速に普及が進んでいます。

本記事ではスマートロックの種類や解錠方法別のメリット、デメリットについても詳しく解説します。

 

スマートロックとは?代表的な製品と鍵が開く仕組みについて

スマートロックとは、Wi-FiやBluetoothと通信できることでドアの錠前をスマートフォンアプリやネットワーク上で発行した暗証番号などで開閉できる機器のことを指します。SDKI.Inc.が2021年3月に発表した調査レポートによると、世界のスマートロック市場は2020年から2026年までの予測期間中に、12.23%以上という成長率が見込まれており、生活やビジネスの中でより身近なモノとなっていくはずです。

日本国内では、2015年がスマートロック元年と呼ばれており、当時、主に住宅市場をターゲットとしたBtoC向け製品として株式会社フォトシンスの「Akerun」、株式会社ライナフの「NinjaLock」、Qrio株式会社の「Qrio Smart Lock」が販売開始となりました。その後も、米国初の住宅向けスマートロックで、クラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」から販売開始したCANDY HOUSE JAPAN株式会社の「SESAME mini」が登場。著者の自宅では後継モデルの「SESAME 4」を愛用しており、カバンから鍵を探すことなくスマホアプリやApple Watchで玄関の鍵を解錠しています。

かたや、BtoB向けには、主にオフィス市場をターゲットとし、入退室管理の効率化に寄与する株式会社ビットキーの「bitlock PRO」、Airbnbのグローバルパートナーとして民泊から宿泊特化型の無人ホテル、最近ではインフィニティプール付きのリゾートホテルなどにも採用される株式会社構造計画研究所の「RemoteLOCK」などが、ビジネス向けの主要なスマートロック製品としてあげられます。

手ぶらでの解錠やビジネスシーンでの鍵管理の効率化にも役立つスマートロックですが、その解錠方法は主に3つの種類があります。

 

テンキー解錠(暗証番号式)

写真:RemoteLOCK5i(構造計画研究所)

 

ドアに設置されたスマートロックのテンキーを押すことで解錠します。旧来型のテンキー式電子錠とは異なり、予約システムやホテル管理システム(PMS)、チェックインシステムなどと連動し、予約ごとに有効期限付きの暗証番号を発行することも可能です。また、管理者は専用の管理画面にWEBブラウザやスマホアプリからログインして入室者ごとに暗証番号の発行、変更、削除ができます。製品価格は3万円から7万円程度のものが多いです。

 

<テンキー解錠ができる代表的なスマートロック>

RemoteLOCK、EPIC、NinjaLock(キーパッドは別売オプション)

 

スマートフォン解錠

 

入室者自身のスマートフォンを使い、専用のアプリやブラウザ上のURLをクリックすることで解錠します。住宅向けのスマートロックで利用されることの多い解錠方法であり、外出・帰宅、出勤・退勤など1日に2、3回程度の頻度で施解錠するシーンや空間との相性は抜群です。手持ちのスマホからスピーディーに解錠でき、鍵を持ち歩いたり、カバンの中から探したりする手間も一切なくなります。製品価格はコンシューマ向けには1万円を切るものもあれば、ビジネス向けに月額費用のみ(月々5,000円から15,000円程度)の製品もあります。

 

<スマートフォン解錠ができる代表的なスマートロック>

Qrio Lock、SESAME mini、bitlock PRO、Akerun

 

QRコード解錠

写真:RemoteLOCK8j-Q(構造計画研究所)

 

入室者のスマートフォンに表示したQRコードや、紙やレシートに印字したQRコードをスマートロックの認証部にかざすことで解錠します。コロナ禍により、小売店ではセルフレジが急増し、決済方法もQRコード決済が急速に普及しました。QRコードの活用はホテルのチェックインにおいても増えており、フロントにあるチェックイン端末にQRコードをかざすことでスムーズにチェックインができるスマートチェックインも注目を集めています。QRコードによる解錠は、一見するとカードや暗証番号がQRコードに置き換わっただけのように思えますが、例えば決済やチェックインとの連動よりシームレスで利便性の高い顧客体験を提供でき、今後さらなる付加価値が生まれることにも期待されています。QRコード解錠のスマートロックはまだ発売されたばかりですので、価格については各社HPをご覧ください。

 

<QRコード解錠ができる代表的なスマートロック>

RemoteLOCK 8j-Q、LockMania

 

スマートロックの解錠タイプ別のメリット・デメリット

 

スマートロックにはさまざまな解錠タイプがあることをご紹介しましたが、各タイプにはそれぞれにメリットとデメリットがあります。ここからは解錠タイプ別のメリット・デメリットについて利用シーンの具体例を交えながら解説します。

 

テンキー解錠で「鍵トラブルを解消し業務効率化へ」

テンキー解錠のスマートロックは、カードキーや物理鍵とは違い、暗証番号が鍵代わりになるため、物理的な鍵の受け渡しや保管が不要です。つまり、施設を完全キーレスで運営でき、これにより施設の管理者と利用者の双方にとってさまざまなメリットが生まれます。

その最たるメリットとして、カードキーや物理鍵を利用する際に起こりがちな、「鍵の紛失」や「オートロックによるインキー」を防げることがあげられます。暗証番号の場合、そもそも鍵の持ち歩きがなくなるため、紛失やインキーが起こりません。また、万が一暗証番号を忘れたという場合も、暗証番号であればメール、LINE、電話などの手段で手軽に送付できるため、トラブル時にも遠隔から対応しやすいという利点もあります。

さらに、後述のスマートフォン解錠やQRコード解錠との違いとして、暗証番号であれば、年齢や国籍を問わず誰もが直感的に操作方法を理解できます。一時利用が多いシーンでは特に、入室時の操作がシンプルでわかりやすいことが、トラブルを防ぐ上での重要なポイントとなります。

一方、暗証番号型のデメリットとして、キーパッドへの接触が必要になります。カードキーと比べると数秒程度ですが解錠に時間がかかり、コロナ禍においてはタッチレスによる感染症対策が望ましいことも事実です。ただし、コロナ対策としては、抗菌シートを貼付したり、ドアノブとともにキーパッド面を消毒するなどして、柔軟に対応している事業者も多く見受けられます。

 

スマートフォン解錠で「完全非接触化を実現し感染症対策へ」

スマートフォン解錠の場合、入室者自身のスマートフォンを操作して解錠するため、不特定多数が使いまわしするカードキーやキーパッドに触れることはありません。コロナ禍における感染症対策として有効です。

また、従業員数が50名未満のスモールオフィスなどにおいては、鍵当番を決めて、日々の最初の入室時と最終の退室時には、担当者が解錠、施錠するような運用もいまだに多く見られます。このようなシーンにおいてスマートフォン解錠ができれば、従業員は自分の端末から手軽に施錠・解錠でき、かつ、入室の履歴も残るため、オフィス運営の鍵管理の手間や煩雑さからは一切解放されます。

他方で宿泊施設などの場合、専用のスマホアプリをゲストにインストールしてもらうのはハードルが高く、自社施設の利用者向けアプリに機能を組み込むとなると開発のコストやメンテナンスが必要になる点は注意が必要です。

 

QRコード解錠で「スマートな施設体験を提供し顧客満足度の向上へ」

QRコードでのドアの解錠は世間一般的にまだまだ実運用がはじまったばかりです。例えば、コワーキングスペース入口の自動ドアや、スポーツ施設やドッグランの入口など、施設のメインとなる入口において使われることが多く、ホテルの客室のように施設内のすべてのドアに設置されていることは珍しいでしょう。

その理由として、1台あたりの価格感が一般的な電子錠(3~7万円程度)と比べると割高であることがあげられます。コスト負担が大きいことはQRコード解錠のネガティブな要素ではありますが、その分、得られるメリットも大いにあります。

ホテルやコワーキングスペースなどの空間利用において受付やチェックインが必要となる場合、このチェックインから入室にかけてのフローをシームレスで利便性高くできるのがQRコード解錠です。施設利用者は受付手続きが完了すると解錠用のQRコードを受け取り、そのまま入室できます。そうした新しい施設体験を提供することにより、利用者の心を躍らせ、施設利用に感動や驚きをもたらすことも期待されます。

将来的には予約、チェックイン、入室、付帯サービスの利用・決済、チェックアウトに至るまでのすべてがスマホのQRコードで完了する仕組みを実現でき、QRコード解錠は、新たな運営スタイルの開拓や価値提供のひとつの材料となるはずです。

 

【まとめ】結局、どのタイプのスマートロックがおすすめ?

 

解錠タイプ別にスマートロックの特徴やメリット、デメリットをご紹介してまいりましたが、「結局、どのスマートロックがおすすめなの?」、そうお感じではないでしょうか。結論としては、利用シーンや何を実現したいかによって当然ながらおすすめのスマートロックも異なります。例えば、宿泊施設において完全無人で運営したい。そうしたニーズの場合、鍵の受け渡しを非対面でできる必要があり、そのソリューションとしてキーレス化があげられます。このキーレス化だけを見ると、テンキー解錠、スマートフォン解錠、QRコード解錠のいずれのタイプもキーレス化できて、無人化を実現できるように思えます。他方で、宿泊施設の無人運営には、非対面で鍵を受け渡せることのほかにも、「万が一トラブルが発生した際に遠隔からでも対応がしやすいこと」、「利用にあたり戸惑ったり、操作ミスをしにくいチェックインフローであること」、「高い顧客満足度を得るにあたり、人がいないことを補えるだけの利便性や低価格を担保できること」などが重要となり、実現したいことに対して多角的なポイントから比較、検討していくべきでしょう。

本記事では最近ビジネスシーンで見かけたり、耳にする機会が増えている「スマートロック」について、解錠のタイプを軸に解説してまいりましたが、次回の記事ではいよいよホテルや旅館においてスマートロックを活用するメリットについて詳しく解説します。ぜひご期待ください。

 

*「QRコード」は(株)デンソーウェーブの登録商標です。

*  本記事は株式会社構造計画研究所様からの寄稿物です。