ホテルや旅館の客室清掃は、次の宿泊者がチェックインする前に全てを終わらせなければならず、時間に追われる業務となっています。
効率良く業務をおこなうには、時間短縮のための対策が必要です。
具体的に、どのような対策を執ることで客室清掃業務が時間短縮できるのでしょうか?
今回は、観光庁の「宿泊業の生産性向上事例集」を元に、客室清掃の時間短縮に関する対策をご紹介します。
客室清掃業務の流れ
客室清掃の時間短縮対策を紹介する前に、一般的な業務の流れを見てみましょう。
客室のゴミ回収・掃除
客室清掃では、まず室内のゴミ回収をします。
全てのゴミ回収が終わった後は、水回りの拭き掃除をおこない、客室全体に掃除機をかけます。
ゴミ回収・水回りの掃除・掃除機でそれぞれ担当を決めている場合も多くあり、効率よくおこなうためには連携が大事です。
リネン類の交換
使用済みのタオル・シーツ・枕カバー等のリネン類を回収し、新しいものと交換します。
宿泊者がチェックアウトした客室全てのリネン類を回収するため、かなりの量を回収することになります。
回収から交換まで素早くおこなわなければならず、スピードが求められる作業です。
ベッドメイキング
ベッドメイキングも客室清掃業務の1つです。
ベッドにしわや汚れがないように整えていきます。
できるだけ素早く、完璧に綺麗なベッドメイキング技術を取得するまでには回数をこなしていく必要があります。
アメニティの交換・補充
客室清掃業務は、掃除をしながら使用済みアメニティの交換や補充をおこないます。
シャンプーやリンス、歯ブラシ、食器、スリッパというようにアメニティの数は多くあるため、確認する箇所は多いです。
宿泊者のなかには、備品を元のように揃えてくれる人もいるため、見落とさないように細かく確認する必要があります。
客室清掃の時間短縮対策①清掃マニュアルの作成
観光庁の「宿泊業の生産性向上事例集」によると、清掃マニュアルの作成が客室清掃の時間短縮対策として実施されています。
長野県にある「湯田中温泉の宿 あぶらや燈下」では、インバウンド効果によって稼働率が向上しているにもかかわらず、清掃スタッフの応募数は減少しており、人手不足が問題視されるようになりました。
人手不足問題に伴い、業務の効率化が必要となり施された対策が「一人一室完結清掃方式」と清掃手順の設定です。
清掃業務をおこなうスタッフの人数を一室につき1人とし、ゴミ片付けから点検まで1つずつ手順を定めました。
このように清掃マニュアルを作成したことによって、分業制に比べて効率性が良くなり、一人ひとりの清掃スキルもアップするという効果が得られています。
結果的に、清掃業務の大幅な時間短縮が実現しています。
客室清掃の時間短縮対策②作業ごとの標準時間を設定
三重県にある「寿亭」では、客室清掃業務の時間短縮のために作業ごとの標準時間を設定しています。
それまでは、作業の目安となる標準時間が定められていないことで、清掃時間にバラつきが起きていました。
清掃時間にバラつきがあるということは、時間内に業務が終わらないという恐れも懸念されます。
水回り掃除やゴミ回収、シーツ回収などそれぞれの作業に標準時間を定めることで、担当者によってバラつきがあった作業時間が統一化されました。
寿亭では、毎月定例会議で改善対策の実施状況を確認しており、清掃業務の手順に納得できるまで話し合いがおこなわれているようです。
改善効果も高く、客室清掃の大幅な時間短縮が実現しています。
客室清掃の時間短縮対策③備品置き場の見直し
さらに、三重県の「寿亭」では、備品の置き場の見直しをおこなうことで客室清掃に掛かる時間の短縮を実現しています。
清掃スタッフは客室清掃のために備品を取りに行く時間が必要です。
しかし、位置がバラバラである場合、必要なものを揃えたり、取りに行くことに余計な時間が掛かってしまいます。
備品の位置やルールが定められることで、スタッフが効率良く備品を揃えることができます。
結果的にも、寿亭では年間で備品を取りに行く時間が4時間も短縮されており、充分な成果があると言えます。
客室清掃の時間短縮対策④ロボット掃除機の導入
鹿児島県の「活きづくりと海の宿 いせえび荘」では、ロボット掃除機を導入することで、客室清掃の時間短縮を実現しています。
清掃スタッフは、ロボット掃除機を動かしながら、他の作業にあたることができ、効率良く業務がおこなえます。
また、外側や高い場所といった危険性がある箇所の清掃もロボット掃除機であれば、作業が可能です。
ロボット掃除機の導入で、人がおこなうには難しい作業が簡単に可能になり、結果的に業務の時間短縮となっています。
参考 http://www.shukuhaku-kaizen.com/all/
まとめ
客室清掃は、ゴミ回収からアメニティの交換・補充まで多くあります。
全ての作業を時間内に終わらせるためには、効率的な対策が必要です。
全国のホテルや旅館では、客室清掃業務の時間短縮を実現するために様々な対策を実施しています。
観光庁の「宿泊業の生産性向上事例集」を元に、具体的な対策を見てみると、清掃マニュアルの作成や標準時間を設定しています。
また、備品の置き場を見直し、ロボット掃除機の導入で効率性を高めています。
このような対策は、はっきりと数字にも表れているため、非常に効果的な対策であると言えます。