こうすれば大丈夫、焚き火を楽しんだあとにすることとは?

キャンプの楽しみの一つが焚き火です。夜の闇に炎がパチパチと音をたてて燃える様子は、もんやり見てるだけでもリラックス効果があるくらい、美しいものです。特にアウトドアを楽しむ人は、焚き火を愛する人が多いような気がします。

しかし、焚き火で問題になるのが、その後始末の方法です。焚き火は終わったあとに安全に後始末をしないと、最悪の場合には山火事の原因になったり、燃えカスで他の人が火傷したりする可能性もあります。

では、実際に、焚き火が終わったあとには、どのようなことをしなくてはならないのでしょうか。今回の記事では、正しい焚き火の後始末の方法を検証します。

 

焚き火を消すために必要なこととは

当然のことですが、なにもないところで、いきなり火が燃えるようなことはありません。つまり、火が燃えるには何らかの「条件」が必要になります。逆に言うと、火が燃える「条件」がなくなれば、焚き火は消えやすくなるわけです。では、火が燃えるための「条件」とは、どのようなものでしょうか。

まず火が燃えるためには、「燃料」が必要です。キャンプ中であれば薪や炭が燃料となります。そして、ものが燃えるには「酸素」が必要です。逆にいうと、酸素のないところでは、ものは燃えません。最後に、物が燃えるには、「熱」が必要です。

つまり、この「燃料」・「酸素」・「熱」のどれかをコントロールできれば、焚き火は消えるということになります。

「燃料」をコントロールするというのは、薪や炭の量をコントロールすることを意味しますし、「酸素」のコントロールとは、例えば砂などを焚き火に懸けることで、焚き火に酸素の供給が遮断され、その結果として火が消えることを意味します。また、「熱」をコントロールするとは、水などをかけて急激に焚き火の温度を下げることで、火を消すことを意味します。

このように、火が燃えるための3要素のどれかをコントロールできれば、火自体は消すことができます。しかし、キャンプ場での焚き火を消す場合には、その方法をよく考える必要があります。というのも、焚き火の消し方を間違うと、キャンプ場の自然に悪影響を与えたり、他のキャンパーへ迷惑をかける可能性があるからです。

 

キャンプで焚き火を消すときにやりがちなミス

実際にキャンプ場で焚き火をした後、キャンパーがやりがちなミスがいくつかあります。この章では、そんな焚き火を消すときにやりがちなミスを解説します。

水をかける

焚き火を消す方法として、ほぼ全キャンパーが最初に思いつくであろう方法は、水をかけることではないでしょうか。確かに、火は水をかけると消えます。しかし、焚き火を消す方法としては、水をかけるという方法は、意外にも最善策ではないことが多いのです。

まず、焚き火を消すためには、実は大量の水が必要となります。少量の水を火にかけただけでは水はすぐに蒸発してしまうため、火を水で消すときには、大量の水を一気に火に投入しなくてはならないのです。川や湖・海といった水辺の近くで焚き火をしていたとしても、人力で焚き火が消えるまで水をかけ続けるというのは、相当な労力が必要になります。

また、焚き火を水で消した場合、そのあとに大量の灰を含んだ水が残されることになります。もちろんこの灰を含んだ水はキャンプ場の土に吸収されますが、燃えかすの灰は強めのアルカリ性という特質を持っています。そのため、キャンプ場の土壌のpH(ペーハー)を急激に変化させることにもなりかねません。キャンプ場の土壌が変わると、そこに生息している植物にも影響を与える可能性があります。つまり、長い目で見ると、キャンプ場の環境が変わってしまいかねないのです。

加えて、現在多くのキャンプ場は直火方式の焚き火を禁止しており、焚き火台を使うことをキャンパーに義務付けているところがほとんどです。焚き火台は鉄などの金属でできています。そのため、焚き火台を使って火をつけているときに水を大量にかけると、急激な温度変化により、焚き火台の金属が変形したり割れたりする可能性があります。

このように、焚き火を水で消すことは、キャンプの場では良いアイデアとはいえないのです。

 

燃えカスを土(あるいは砂)の中に埋める

続いて、焚き火を消す方法として、焚き火の燃えカスをキャンプ場の土や砂の中に埋めるというものがあります。

この方法は、焚き火への酸素の供給を遮断することで火を消す方法の一つです。例えば、キャンプ場で油を多量に使う料理をしているときに、もしも油の入ったお鍋から火の手が上がってしまった場合などは、多量の砂で油の鍋を埋めることで鎮火させることができるので、キャンプ中の緊急事態を乗り切るための一つの方法として、憶えておいても損はないかもしれません。

しかし、キャンプの焚き火の燃えカスを土の中に埋めると、やはり燃えカスの灰がキャンプ場の動植物や周囲の環境に影響を与える場合があるので、おすすめの方法ではありません。

また、土や砂の中に埋めた焚き火の燃えカスが完全に消えるまでには、若干の時間がかかります。つまり、埋めた焚き火の燃えカスがまだ熱いうちに、その上を裸足で通ると、足をやけどする可能性があるのです。意外な話に思えますが、海岸でのバーベキューの時に意外とこうした、焚き火の燃えカスによる足のやけどの被害が報告されています。

こうしたことを考えると、やはり焚き火の燃えカスを土や砂の中に埋める方法は避けた方が良いことがわかります。

では、キャンプで焚き火を楽しんだ後には、どのように焚き火を始末するとよいのでしょうか。

 

まず、薪自体を燃やし尽くす前提で焚き火をすること

まず、第1に焚き火の燃料となる薪や炭を燃やし尽くしてしまうことが、最初の方法になります。火は「燃料」がなくなれば「酸素」や「熱」があったとしても、燃え続けることはできなくなります。人間が焚き火の「酸素」や「熱」をコントロールすることは困難ですが、「燃料」なら比較的簡単にコントロールすることができます。

薪の燃焼時間は、薪の大きさや太さ木の種類によって異なりますが、大体薪1本あたり約2時間の燃焼時間と考えておいた方がよいでしょう。つまり、焚き火を終わりたい時間の2時間前からは、新たな薪をくべないようにすると、火は消えやすくなります。もしも、焚き火が終わる前のラスト2時間で、火力を強くしたいときには、小さくて細い枝をくべるようにしたほうがよいでしょう。

また、炭火を使った焚き火の場合、ほとんどの炭は燃焼時間が約1時間と短いものが多いのですが、備長炭やオガ炭は3時間近く燃え続けるので、焚き火の時間調整に注意が必要です。

焚き火に使った薪や炭は、白い灰になるまで燃え尽くしてしまうと、そこから再び発火することはありません。焚き火の燃料は、灰になるまで燃やしましょう。

 

もしも、薪が余ったら

キャンプ場では、焚き火で使うはずだった薪が、なぜか余ってしまうということもありえます。そんな薪はどのように処理するとよいのでしょうか。

まず、キャンプ場で現地調達した薪であれば、キャンプ場の管理者に相談した方が良いでしょう。キャンプ場によっては、薪を引き取ってくれる場所もあるかもしれません。あるいは、同じキャンプ場で焚き火をするであろう他のキャンパーに、余った薪をプレゼントするという方法もあります。長い時間焚き火を楽しむキャンパーであれば、薪をもらうのは嬉しいでしょう。

一方、自宅から持参した薪が余った場合は、キャンプ場に置いておくことはせず、自宅に持ち帰るようにしましょう。というのも、薪の中には様々な昆虫の幼虫が住んでいることが多く、中には樹木を枯らせる昆虫もいます。自宅から持参した薪にそうした昆虫がいた場合、その薪をキャンプ場に置いておくと、幼虫がキャンプ場の他の樹木に住みついた結果、木々に悪影響を与える可能性もあります。

基本的には、キャンプ場で現地調達をした薪は現地に置いてくること、キャンプ場以外で調達した薪は自宅に持ち帰るという方針で、余った薪の処理は考えておくのがおすすめです。

また、炭を使った焚き火のときでも、持参した炭が余ったときは自宅に持ち帰り、キャンプ場で購入した炭なら、施設側に相談するか、近くいる他のキャンパーにプレゼントするのがよいでしょう。 

 

確実に火を消すために、火消し壺を用意すること

薪や炭による火を確実に消すのであれば、キャンプに火消し壷を持っていくことがおすすめです。火消し壺は燃えている炭や薪を金属制のバケツの中に入れ、密封することで、酸素の供給を遮断することで、火を消すものです1。

火消し壺を使うと、自然に火が消えるのを待つよりも、早く火が消えます。また、火種を持ち歩くことができるので、暖房用の焚き火と調理用の焚き火を両方同時に使いたいときなどに、最初の焚き火の火種を火消し壺に入れて、もう一つの焚き火場に持っていくということもできます。

 

おすすめの火消し壺3選

こちらでは、おすすめの火消し壺を3つご紹介します。

 

キャプテンスタック 大型火消し壺 火おこし器セット

こちらの火消し壺は火起こし器具もセットになった火消し壺です。アマゾンで3000円前後で購入することができます。火消し壺と火おこし器を重ねて収納することができるため、キャンプに行くときも荷物が増えずにすみます。金属製なので、非常に軽く、また、蓋がしっかりと締まる作りなので、移動中に火消し壺が倒れる危険性も少ないのが嬉しい一品です。

Ash Sack

ソロキャンプを楽しむ人には、こちらの火消し壺がおすすめです。とはいっても、こちらは「火消し袋」とでも呼ぶべき形態をしています。見た目はゴム製の袋のように見えますが、この袋の中に火種を入れて、酸素の供給を遮断することで、消火します。折りたたむと非常に小さくなり、重量も軽いので、女性やソロキャンプでの使用がおすすめです。

バンドック チャコール缶

手軽に購入しやすいのが、こちらの火消し壺です。アマゾンで2000円以内で購入することができます。重量は1kgを切る程度なので、少し重くなりますが、車で移動する場合なら、持ち運びに苦労はしないでしょう。

灰の始末は、キャンプ場に確認すること

焚き火で火が消えたあとに残されるのが灰の山。この灰の始末はどのようにすると良いのでしょうか。

基本的には、キャンプ場によって対応が変わります。灰を集める場所を作っているキャンプ場もありますし、キャンパー自身に灰の持ち帰りを義務付けているキャンプ場もあります。キャンプの予約時に焚き火の灰の処理方法を施設側に質問しておくのがおすすめです。

 

もし、自宅に持ち帰る場合は燃えるゴミとして処分

キャンプの灰を自宅に持ち帰ったときには、帰宅後に捨てることになります。灰が燃えるゴミになるのか、燃えないごみになるのかは、お住まいの地方自治体によって異なるため、地元の情報を確認することが必要になります。

もしも、燃えるゴミとして処分する場合には、少し水を加えて、灰を固めた状態にして処分するのがおすすめです。粉状の灰のまま捨てると、袋が破れて灰が散乱する可能性があるので、避けたほうが良いでしょう。

 

焚き火なしで、キャンプは楽しめる?

焚き火はキャンプの華ですが、灰や燃えカスの後始末を考えたら、意外と面倒なことでもあります。とはいえ、後始末が面倒なら、焚き火なしのキャンプを考えるのもキャンプを楽しむ方法ではあります。特に火が必要になるのは、キャンプ中の料理の時です。

焚き火をせずに、キャンプで料理をすることは可能なのでしょうか。

電源ありのサイトでホットプレートを利用

最近のキャンプサイトでは、AC電源付きのところも多くなっています。また、車でキャンプに行く人の中には、自前で発電機を持っていく人もいることでしょう。そのように電源が確保できるのであれば、焚き火をせずにホットプレートを使って料理をすると、焚き火の後始末の心配がありません。

ホットプレートで料理をすると、料理後の後始末も楽になります。最近のホットプレートには蒸し器やたこ焼き器がセットとなっているのもあるので、ホットプレートを使っていろいろな種類の料理を作ることができます。

 

カセットコンロをフル活用

電源が確保できるなら、ホットプレートをキャンプで使うと、焚き火の後始末の心配をする必要はなくなります。でも、電源が確保できないキャンプ場では、カセットコンロを使うことをおすすめします。

カセットコンロは、ホームセンターで安く手に入れることができますし、カセットコンロに必要なガス缶も数百円で買うことができます。カセットコンロ自体の重量も軽いものなので、持ち運びにも苦労することはないでしょう。

カセットコンロがあれば、炒めものや鍋物も作ることができます。また、冬キャンプなどの寒いところでもカセットコンロなら問題なく火がつくという利点もあります。

 

まとめ

今回の記事では焚き火の後始末の方法に加えて、焚き火をせずにキャンプを楽しむ方法を考察しました。

焚き火は火が消えたあとの後始末まで完全にできる人が、楽しむべきものです。とはいえ、火が消えるまでには時間がかかります。焚き火をする人は、火消し壺を持参してキャンプに行ったほうが良いでしょう。また、焚き火の後始末に自信がない人そしてキャンプの夜はすぐに眠りたい人は、電源付きのキャンプサイトをフル活用するか、カセットコンロを持っていくのがおすすめです。

後始末は面倒でも、焚き火の香りや美しさは独特なものです。上手に、そして安全に後始末をすることで、気軽に焚き火ができるようになりますよ。