「古民家風の家をリノベーションして、民泊事業を始めたいな。でも他の仕事もしているから、大型連休とかの繁忙期だけ営業したい。」
「使っていない実家を取り壊したくない。活用方法を考えたけど、民泊として利用しようかな?
でも、旅館業法だと敷居が高く、コストも高くつきそう。良い方法がないかな?」
これから民泊として、既に持っている物件や、知り合いから手頃な物件を手に入れられるから経営してみたいと考えている方も多いかと思います。
ここでは2018年に民泊新法として施工された、住宅宿泊事業法を詳しく解説します!
旅館業法との違いや、届出・ガイドラインの基準を理解することで、民泊経営が身近なものとなるでしょう。
住宅宿泊事業法とは?
住宅宿泊事業法とは、2018年に急速に加速していた民泊について、安全面・衛生面の確保ができていないこと、またゴミ出しや騒音などにより、近隣住民とのトラブルが多く発生したため、一定のルール化をはかり、健全な民泊サービスの普及をはかる目的で施工されました。
「旅館業法の許認可がなくとも、民泊経営ができるの?」
このような疑問を感じた方もいるではないでしょうか。
宿泊する上では、旅館業法許可が原則必要となります。
ですが、今回取り上げた住宅宿泊事業法 第3条 第1項の届出を行ったものは旅館業法の規定に問わず、民泊経営を行う事ができます。
またこの住宅とは下記の条件が必要です!
設備要件
- 台所
- 浴室
- トイレ
- 洗面所
居住要件
- 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
- 入居者の募集が行われている家屋
- 随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋
ちなみに旅館業法は、都道府県の保健所への申請が必要です。
具体的な申請方法・手順は下記の通り
① 事前相談 ➡︎ ② 許可申請 ➡︎ ③ 施設検査 ➡︎ ④ 許可 ➡︎ ⑤ 営業開始
このように、旅館業法の届出には幾多の手順が必要となります。
住宅宿泊事業法の届出基準は、旅館業法と比べても簡易的で基準が低く設定されていることがわかりますね。
また、事前相談には
- 施設の所在地
- 施設の図面
- 建築基準法への適合状況
- 消防法への適合状況
- マンション管理規約
おおよその自治体が事前相談として上記内容を確認していきます。
消防設備などには専門家の意見や知識も必要であり、コストと時間がかかるため、住宅宿泊事業法の届出の方が、民泊を開業する上ではハードルが低く設定されています。
出の方が、民泊を開業する上ではハードルが低く設定されています。
住宅宿泊事業法ガイドラインのチェックポイント
国土交通省が住宅宿泊事業法施行要領として、ガイドラインを定めています。
非常にボリュームが大きい内容となっていますので、こちらでは概要を10個にまとめてお伝えします。
民泊専用の新築投資用マンションは届出不可
住宅宿泊事業法では、民泊施設として提供が認められている住宅のルールが定められています。
しかし、民泊専用の新築投資用マンションは住宅宿泊事業として届出を行うことはできません。
どのような住宅でも届出が可能というわけではありません。
居住要件が定められており、次の3つのうちいずれかの要件に該当する必要があります。
- 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
- 入居者の募集が行われている家屋
- 随時その所有者、賃貸人または転借人の居住の用に供されている家屋
これにより、居住履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションは要件に含まれていませんので、届出が不可となります。
実際に人を宿泊させた日数をカウント
住宅宿泊事業法では、180日の宿泊日数制限が定められています。
日数のカウントは、実際に人を民泊施設に宿泊させた日数で算出します。
そのため、宿泊者を募集した日数は民泊事業営業の日数カウントに含まれません。
1泊とカウントするにあたり、短期間であることや日付を超えていることは条件ではありません。
宿泊料を受けて届出住宅に宿泊したという実績が1日とカウントされます。
人を宿泊させる日数は届出住宅ごとのカウント
住宅宿泊事業法の特徴である180日の宿泊日数制限は、届出住宅ごとのカウントになります。
そのため、事業者を変更しても、同じ届出住宅で営業を続けることはできません。
180日以上営業を続けたい場合は、住宅宿泊事業法ではなく旅館業法に基づく手続きが必要です。
同届出住宅において、住宅宿泊事業者を変更しても日数算定がリセットされるわけではないという部分に注意しておきましょう。
管理規約で住宅宿泊事業が禁止されているマンションは営業不可
マンションで住宅宿泊事業を開業するにあたって、管理規約の内容に則って営業を行う必要があります。
マンションによっては、敷地内で民泊営業を認めていないケースもあります。
管理規約内に住宅宿泊事業を禁止する旨が記載されている場合は、住宅宿泊事業を行うことはできません。
また、住宅宿泊事業の届出を行う際に、マンションの管理組合に事業実施の報告も必要です。
管理組合に届出住宅において、住宅宿泊事業の営業を禁止する意思がないことを確認し、その旨を証明する書類を住宅宿泊事業の届出書と共に提出します。
報告や届出を怠ってしまうと、後々大きなトラブルが発生してしまいますので、事前に管理組合に確認や報告をするようにしましょう。
消防法令適合通知書を住宅宿泊事業法の届出時に提出
住宅宿泊事業法の届出を行う際には、「消防法令適合通知書」も併せて提出します。
届出住宅が消防法令の基準に適合している建物であるかを確認するために重要な書類です。
ホテルや旅館の営業に欠かせないものですが、住宅宿泊事業においても提出が義務付けられています。
家主の居住有無や火災危険性などに応じて、消防法令上の用途が判定されます。
宿泊者を安全に迎え入れるための大切な手続きです。
宿泊者一人当たりの床面積は3.3㎡以上確保
ガイドライン上では、宿泊者一人当たりの床面積は3.3㎡以上確保することが必要であると記載があります。
これは、感染症等衛生上のリスクを抑えるためです。
民泊を営むにあたり、不特定多数の宿泊者が利用することで、衛生面のリスクが懸念されます。
新型コロナが流行している昨今において、感染症対策は外せない部分です。
宿泊者が占有する面積を3.3㎡以上確保できる広さを保つ必要があります。
ホテルや旅館などと同じように民泊でも、感染症対策を講じることが安全な施設を提供するための条件となります。
チェックイン時は本人確認が必要
チェックイン時に、事業者は宿泊者一人ひとりの本人確認を実施しなければなりません。
宿泊者名簿の正確な記載を確保する必要があるためです。
家主不在型の住宅宿泊事業者も多いでしょう。
本人確認は、必ずしも対面で行う必要はありません。
テレビ電話やタブレット、システムを介しての方法も認められています。
宿泊者が外国人の場合は、名簿と一緒にパスポートの写しを保管しなければなりません。
また、宿泊者名簿は3年間の保管が義務付けられています。
発生したゴミは事業ゴミ扱いとなる
住宅宿泊事業の営業で発生したゴミは、事業ゴミ扱いとなり、事業者が責任を持って処理しなければなりません。
民泊が懸念される理由の一つに、宿泊者のゴミ処理問題が挙げられます。
地域によって分別方法が異なります。
特に、海外からの宿泊者は日本のゴミルールに慣れていない方も多いです。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律である「廃棄物処理法」に基づいて、処理を行わなければなりません。
これに違反すると、罰則や罰金も定められていますので、「宿泊者が出したゴミだから」と他人事として捉えず、宿泊者へのゴミの説明や案内も事業者の責務となります。
近隣住民からの苦情の対応
民泊を営むうえで、近隣住民への配慮は必要不可欠です。
ときには、苦情が入ることもあります。
万が一、近隣住民から苦情が入った場合は、深夜早朝を問わず事業者が応対または電話対応をする必要があると記載されています。
また、近隣住民からの苦情のみならず、チェックイン・アウト前後の宿泊者からの問い合わせにも対応します。
届出をし、必要な設備を整えればビジネスができるというわけではありません。
住宅宿泊事業者は、宿泊者と近隣住民どちらにも安心を提供できるように、細部への配慮が求められます。
定期報告の義務
住宅宿泊事業者は、定期的に都道府県知事に宿泊者の人数や日数などの実績を報告することが義務付けられています。
毎月偶数月の15日までに、その直前の2ヶ月分の報告をする必要があります。
定期報告を怠る行為や虚偽報告に対して、罰則が定められているため、注意しておきましょう。
宿泊実績を報告するため、上記でご紹介した宿泊者名簿が必要となります。
適切な民泊を運営していくために、正確な情報を管理しておかなければなりません。
住宅宿泊事業法 メリット・デメリット
メリット
先述したように、住宅宿泊事業法は旅館業の許認可と比べ、比較的簡単に届出を行うことができます。
他にも、
- 旅館業法では許可がおりなかった、住宅街でも営業ができる
- 居室の床面積に制限がない
- 消防法などの基準が緩和された事で、開設するまでの費用が抑えられる
- 民泊管理者・不動産などの申請はインターネット上からでも可能に
デメリット
旅館業法と比べた、住宅宿泊事業法のデメリットは下記の通りです。
①180日の宿泊日数制限が設けられている。
ホスト居住型・ホスト不在型とも180日の宿泊日数制限が設けられています。具体的な日数のカウントの仕方は、国土交通省令・厚生労働省令で定める、届出住宅ごとに算定します。
- 1年間:毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで
- 1日:正午から翌日の正午まで
②ホスト不在型民泊では、国土交通大臣へ登録した「住宅宿泊管理事業者」へ管理を委託する必要があり。そのため、管理事業者に対してコストがかかり、180日宿泊日数制限の稼働率から、ホスト不在型の運営は難しい。
180日の宿泊制限を受けないための打開策
180日の営業稼働日数の制限により、旅館業法にも影響のない事業を展開する民泊事業者もあるようです。具体的には…
- マンスリーマンションへの変更
- 一時的なレンタルスペースなどの貸し出し
これらの事業を併合して行うことで、民泊運営を住宅を効率的に稼働することができますね。
住宅宿泊事業法 罰則は??
2017年:民泊新法の制定により、罰則内容はより強化されています。
上限 3万円 ⇨ 6ヶ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金又は科料
2020年に予定されていた、東京オリンピック開催の影響を受けて、海外観光客の増加によるヤミ民泊への宿泊を取り締まる意味でも罰則が大幅に強化され、規制も厳しくされました。
また段階として、
- 住宅宿泊管理業者・仲介業者への委託義務違反 ⇨ 50万円以下の罰金
- 住宅宿泊事業法にかかる、変更の届出をしていない又は虚偽の変更の届出をした者
- 宿泊名簿の備付気義務に、標識の掲示義務に違反した者
- 定期報告をしていない又は虚偽の報告をしたもの
- 立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
- 質問に対して答弁しない者又は虚偽の答弁をした者 ⇨ 30万円以下の罰金
事業廃止の届出をしていない者又は虚偽の事業廃止の届出をした者 ⇨ 20万円以下の罰金
住宅宿泊事業法の疑問点はポータルサイトを活用しよう
住宅宿泊事業法を施行するにあたり、観光庁は民泊制度ポータルサイトや民泊制度に関する問い合わせの受付を行うコールセンターを開設しています。
住宅事業法で分からないこと、不安なことを問い合わせできるシステムです。
電話だけでなく、お問い合わせフォームが設置されているので、メールからも問い合わせ可能です。
また、ポータルサイト内に、住宅宿泊事業に関する届出や手続きができるシステム「民泊制度運営システム」も搭載されています。
オンライン上で手続きができる仕組みとなっており、窓口に出向く煩わしさを省くことができます。
ポータルサイトやコールセンター、運営システムを上手く活用して、適切な事業を進めましょう。
まとめ
住宅宿泊事業法は、許認可の必要のない届出によって開業する事ができる点や、初期投資を抑えられる点が最大のメリットです。
長期的な民泊経営を専念する事を考えるならば、旅館業法を認可を受けて営業した方が、準備した宿泊施設を最大限に活用できるでしょう。
しかし、観光シーズンのみの営業・レンタルスペースなどの様々な業態と併用したい人にとっては、住宅宿泊事業での経営も前向きに考えられますね。
適切な住宅宿泊事業を営むために、ガイドラインや条件などを確認し、ルールに則って準備を行いましょう。
疑問点や不安な部分は、観光庁の民泊制度ポータルサイトで情報を確認し、コールセンターに問い合わせてみてください。
また、オンライン上で手続きや届出を行うことも可能です。
上手く行政のシステムを活用することで、安全な民泊ビジネスを運営していくことができるでしょう。