『ホテル業界の今!』今後の宿泊需要の変動はいかに

宿泊業界は、新型コロナウイルスを見越して新しいホテルが開業する一方で老舗ホテルが営業を終了に踏み切るホテルも少なくありません。ホテルによってどういった将来をみて、どういった手をうっているのか違います。

日本は今まで訪日外国人(インバウンド)に注力してきましたが、今後は国内観光客やマイクロツーリズム客の獲得に注力するとともに、アフターコロナを見越した経営戦略が求められるでしょう。

長期的にみれば新型コロナワクチンが普及し、アフターコロナ後のインバウンド需要の回復が望める可能性があります。

この記事ではホテル業界の数年前を振り返り、今後のホテル業界の需要についてご紹介します。

 

供給過剰!?

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東京オリンピックが決まる数年前からホテルのキャパシティ不足が叫ばれていました。しかし、東京オリンピックが決まった2013年以降から状況は一転し、都市部を中心にホテル建設ラッシュが続いたことで宿泊数が大幅に増え供給が一時過剰になりました。

東京オリンピック以外にも、インバウンド需要の増加や旅館業法の規制緩和などが理由としてあげられます。海外からの旅行客が増えたのは、円安の影響やインバウンド政策といった背景があります。

インバウンド客から人気の観光地ではホテルを増やしても客室が足りず、次々と新規のホテルのオープンしている状況が数年間進みました。

また、旅館業法の規制の緩和により旅館業法の営業許可を取得することのハードルが低くなったことで、使用していない土地や部屋を持っている人や企業がホテル業界に進出したりとホテル開業へ乗り出すといった現象がおこりました。

そして供給過剰によって起こった影響は、2020年1月に初めて新型コロナウイルスが発見され、インバウンドのキャンセルが相次ぎ、感染拡大にともなう入国規制によって大打撃をうけました。

新型コロナウイルスの影響に加え、ホテルの供給過剰問題もあっていまだ建設ラッシュは衰えません

一般的にホテルのプロジェクトのスタートから開業まで、規模によりますが2~3年はかかります。いま建設中のホテルはインバウンドありきという見込みか供給過多の状況下でも勝てる自信のある施設と推測されます。

巨額の費用が費やされるホテルプロジェクトでは、コロナを理由に簡単に中止にはできませんから、出口がみえない状況下で廃業にするか様子をみるか継続をするかの3極化しているようです。

 

少子高齢化

総務省が出しているデータによると、2004年をピークに人口は急激な減少が予測されています。100年前の明治時代後半の水準にもどっていくようで、1000年単位でみても類を見ないようです。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf

人口に占める高齢者の割合が増加する高齢化と出生率の低下により若年者人口が減少する少子化が同時に進む少子高齢化社会になっており、日本の将来にとって大きな問題になるといわれています。

業界ごとでみても影響はありますが、人手不足に悩むサービス業界にも及ぶことは必然だと思われます。ホテル業界では人手不足だけではなくインバウンド対応によるホテル数の増加、他業界よりも高い離職率、不規則なシフトや少ない休日といった問題もあります。

 

ホテル業界の今

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2019年までは東京の稼働率が80%を超えるなどして、需要が足りない状態がつづいていました。しかし、

2020年のコロナショックにより一変しました。観光庁のデータによると80%近くあったシティーホテルやビジネスホテルの稼働率は、2020年5月にそれぞれ20.3%、8.5%と急落しました。GoToトラベルキャンペーンなどの実施から一時稼働率は上昇したものの、年末年始を前にGoToトラベルキャンペーンは一時停止され稼働率は下落しました。

苦境の中でもホテルの開業が相次いでおり、星野リゾートは2020年~2022年の間に国内外で5施設の展開を予定しています。東京の森ビルでは港区の虎ノ門・麻布台の再開発に地区に最高級ホテル「アマン」の新ブランド「ジャヌ東京」を2023年に開業予定です。

また、宿泊特化型・駅近のホテル、JR東日本ホテルメッツ目白とJR東日本ホテルメッツ赤羽が2021年1月にリニューアルオープン。非接触とテレワークの2つのポイントを取り入れ、セルフチェックイン・チェックアウトや混雑状況を確認できるシステム、ビジネス利用に最適なテレワーク向け客室などが登場しました。

老舗の高級ホテルである帝国ホテルは老朽化してきたことから、2036年度に建て替えられる予定です。サービスアパートメントとして、月額36万円でホテル滞在プランを発表しました。

一方でプロ野球・ドラフト会議の会場として知られ韓国大統領になった金大中拉致事件の舞台ともなったホテルグランドパレスが2021年6月に営業を休止することになりました。

ビジネスホテルや民泊を中心にテレワーク需要に取り組みを意識した、長期滞在プランを提供する宿泊施設も増えています

 

新サービス

利用者が減っているホテル業界で、活路を見いだそうとお得なサービスや新たな取組が続々と登場しています。

サービスロボット

サービスロボット_イメージ

サヴィーオークは2013年設立のロボットメーカーです。ホテルや飲食店、病院などに提供されています。

Relay(リレー)は映画スターウォーズに登場するR2D2を細身にした見た目で、完全自走走行可能です。

リアルセンスカメラやレザーを使ったリモートセンシング機能を搭載しているロボットです。ルームサービス業務を行っています。宿泊客が自分のスマートフォンから注文し、サービスロボットが品物をピッキングしてデリバリーしてくれます。

2018年9月に開業した東急ホテルズ系の渋谷ストリームエクセルホテル東急にもRelayが導入されています。コロナが完全に収束した後も、様々な現場でサービスロボットの活躍が広がってゆくと思われます。

 

Re-rent Residence渋谷(リレントレジデンスシブヤ)

Re-rent Residence渋谷_イメージ

東急とUnitoは入居者が家に帰らない日は家賃がかからないサービスアパートメントの賃貸を2021年6月から開始します。入居者が外泊時に自分の部屋をホテルとして貸し出し、家賃が外泊数に応じて減額するシステム「リレント機能」を採用したサービス。

入居者が外泊する際は、自己所有物を鍵付き収納に保管後、運営スタッフが清掃を行った上で部屋を貸し出しするため、宿泊者はホテル同様に宿泊できます。最短1ヶ月から契約可能で敷金、礼金、更新料が不要です。共益費8,000円/月と水道光熱費+Wi-Fi使用料15,000円/月は別途必要となるそうです。

 

まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大で、国内ではワクチン接種が進んでいます。

いずれワクチン接種が進み、感染収束が見込めれば、ビジネス、観光目的の出入国の緩和が広がっていくことと思われます。

前述したサービスロボットがルームサービス業務を行うホテルなど新サービスが続々と登場する中、エンターテイメントの要素を取り入れた差別化戦略の一つでしょう。生き残りのためには今後も従来の考えにとらわれない柔軟な発想で、魅力ある施設運営に期待したいです。