ホテルに到着して最初に行うフロントでのチェックイン。 フロントマンに名前と予約している旨を伝え、渡される用紙に名前を記入。
読者の皆さんも経験のあるよくあるワンシーンと思います。
この記事では、ホテルや旅館・民泊サービスで行われているチェックイン時の本人確認について紹介します。
多忙!?フロントでのチェックイン業務
ホテルや旅館に到着して最初に向かうフロント。そこでキリッと佇まうスタッフの仕事とは何でしょうか。
一般にホテルや旅館のフロントスタッフの仕事は、「宿泊予約」、「応対」、「案内」、「会計」の大きく4つの業務に分けられます。
「宿泊予約」
ホテルとゲスト客が最初にコンタクトを行うポイントとなります。いつ、どの部屋を、どんなお客様が利用されるか素早く処理する必要があるため迅速かつ確実な事務処理能力が求められます。また、急なキャンセルや予約内容の変更等、その日の状況に合わせていく柔軟性も必要となります。
「応対」
チェックイン・チェックアウトの処理などの定常業務に加えて、内線対応や荷物預かりなど、その時々のお客様からの依頼に対応していく業務があります。通常は接客マニュアルがあるものの、臨機応変な行動が求められます。
チェックイン業務では、ホテルの窓口として、宿泊者の方との最初のコミュニケーションを取らなければいけません。そのホテルのイメージを崩さないようにして、笑顔で明るく宿泊者の方に接することが必要となります。また、チェックイン業務では、宿泊者の方の予約内容を確認して、部屋の鍵の手配などもしなければなりません。必要であれば、館内の案内もチェックイン業務のひとつとなります。
「案内」
館内の施設利用に関する情報や周辺の飲食店、交通アクセスなどの情報提供に加え、郵便物、国際電話などの手配などです。
「会計」
チェックアウトまでに発生した費用の精算や各種会計業務を担当します。外貨両替や貴重品の預かりなどもこちらの業務に含まれます。
このように多岐に渡る業務をこなすフロントスタッフには、シフト制で交代しながら働いたり、他の業務と兼務している人もいます。人材不足が叫ばれるホテル・旅館では、こうした業務をいかに効率よく回していくかが業界課題となっています。
チェックインで本人確認はなぜ必要なの?
フロント回りで発生する定常的な業務を削減できれば、付加価値の高いサービスに関わる業務に対して時間やコストを費やせるようになります。
どんなゲスト客に対しても必ず発生すると言ってよいチェックイン業務。ここで行われる内容についてみていきましょう。
ホテルや旅館では旅館業法、民泊施設では住宅宿泊事業法により、「宿泊者名簿の正確な記載とその保存」が義務付けられています。チェックインの現場では本人確認が必須と思われがちですが、実はチェックインの目的は宿泊者名簿の記載とその保存にあります。
多くの宿泊施設ではこの宿泊者名簿の正確な記載を担保する手段として、ゲストに対する本人確認を行っているのです。
法的要件を満たすための手段としての本人確認には、対面による方法に加えて、対面と同等の手段としてICT(情報通信技術)を活用した方法が認められるケースがあります。ICTでの代替を行う上では以下の条件を満たす必要があります。
ICT(情報通信技術)を活用する場合の要件
下記の要件を満たせば、従来対面で行っていたオペレーションをシステムに置き換え、効率的なフロント業務の省人化が望めます。また、スタッフにかかる人件費抑制、それによる他の付加価値サービスへのリソース配分が可能となるでしょう。
- 宿泊者の顔及び旅券が画像により鮮明に確認できること
- 当該画像が施設の近傍から発信されていることを確認できること
- 宿泊者の顔及び旅券が画像により鮮明に確認できること
- 当該画像が住宅宿泊事業者や住宅宿泊管理業者の営業所等、届出住宅内又は届出住宅の近傍から発信されていることが確認できること
将来的な人材不足に備え、上記のようなポイントを踏まえて導入するシステムを検討してみてはいかがでしょうか。
チェックインの時に予約者本人がいない場合は?
ホテルで複数名が泊まる際、チェックインの時間に予約者本人がいない場合はどうなるのでしょうか。
大抵の場合は予約者がチェックインを行いますが、その方がチェックインの時間に間に合わなかったりすると、違う方がチェックインすることになります。
予約者不在でチェックインをしなければなりませんが、そういったことは可能なのでしょうか?答えはYESです。チェックインは予約者本人でなくてもすることができます。
もし、そのようなことになる場合にはフロントに一声添えてチェックインしてください。予約者が後から必ず来るということも伝えましょう。
予約者ではない別の人がチェックインする場合に身分証明書の必要は?
予約者ではない別の人がチェックインをする時は、ほとんどの場合身分証明書の提示の必要はありません。
ちなみに身分証明書というのは、運転免許証や健康保険証、マイナンバーカード、パスポートなどです。公的機関から発行された証明書であれば、大丈夫です。
予約者本人ですら、チェックインの際に身分証明書を見せる必要もないところもあります。しかし、この新型コロナウィルス感染拡大において、身分証明書のチェックするところが増えてきました。
この際はきちんとホテルなどの指示に従ってください。
偽名でホテルの予約はできる?
厚生労働省の旅館業法等により、偽名でのホテルの予約は禁止されています。
もし、万が一火事や地震などの災害などがあった場合、身元の確認が行われます。そういった時に偽名を使っていたら、簡単にバレてしまいます。偽名でホテルの予約はやらないようにしてください。
偽名であるとわかった場合、公文書偽証罪に問われることもあります。きちんと本名でホテルの予約をしましょう。
ホテル予約者の名義変更はできる?
もし仮に自分がホテルの予約して、直前になって宿泊できなくなり、友人が代わりに行くと言った場合、名義変更が必要になりますが、どうなるのでしょうか。
これをきちんとホテル側に説明すれば、名義変更は可能になります。元の予約者の名前を伝えると、ホテル側がきちんと確認が取れるので、大丈夫です。
なるべく事前にホテル側に名義変更の旨を伝えておくといいでしょう。
身分証明書が必要なことがあるのはなぜ?
身分証明書が不必要なホテルなどもありますが、必要なところもあります。なぜ、身分証明書が必要なのでしょうか?その理由は2つあり、1つ目は宿泊台帳に書いてもらった情報と身分証明書の情報の照合しなければならないからです。「2 チェックインで本人確認はなぜ必要なの?」で記している通り、ホテルなどは住宅宿泊事業法により、「宿泊者名簿の正確な記載とその保存」が義務付けられています。
ホテルはその記載されたものが確かな情報か確認するために、本人確認としての身分証明書の提出を求めています。なぜ、「宿泊者名簿の正確な記載とその保存」が必要なのかは、火事や大きな地震などの災害が起こった時のためでもあります。最近ではテロなどから、宿泊者を守るためにも、「宿泊者名簿の正確な記載とその保存」を怠っていません。
外国人の方はパスポート番号や国籍などの記入も行わなければいけないので、その点をご注意ください。2つ目は新型コロナウィルスなどの感染症や食中毒が起こった時の対策のためです。ホテル内で感染症や食中毒が発生した時、その発生源や経路などを調べなければいけません。最近では新型コロナウィルスの拡大防止のために、チェックインとともに検温も求められます。
国内と海外でのチェックイン時の本人確認の違い
日本国内のホテルでチェックインする場合は、基本的にフロントで名前を言うと、予約の確認がなされます。そして、宿泊台帳に自分の情報を記入したのちに、本人確認の身分証明書の提示が求められる場合もあります。その際は、運転免許証や健康保険証、マイナンバーカード、パスポートなどをフロントの方に見せてください。また、オンラインで予約し、決済した場合でも宿泊台帳に記入しなければ行けない場合もあります。
海外では、ホテルのチェックイン時には必ずパスポートの提示が求められます。そして、バウチャーなどの予約確認書の提示も必要となってくるので、これはプリントアウトして持って行きましょうバウチャーは決済が済んでいることを指すものです。海外のホテルのフロントの方のためにも、なるべく英語表記のものを持っていきましょう。
コロナ禍で生じた新たな課題
従来通り対面で行っていたフロントでのチェックイン業務では、コロナ禍ならではの課題も挙がってきます。宿泊客の本人確認や必要事項の記入を対面で行うと、接触や飛沫による感染リスクが生じます。
フロントに飛沫防止のシートやパネルを設置することで多少感染リスクを抑えることも可能ですが、フロント業務そのものをICTの活用によって無人化し、人と人の接触をなくすことによってリスクをゼロにすることも可能です。その際、タブレットのみを配置して省人化するシステムも多く見れますが、多くのゲストが同じ端末画面に触れてチェックインを行うとそこでも接触による感染リスクが生じてしまいます。
ゲスト客が持っている端末を使用したり、触れずにチェックイン可能な非接触式のカードやQRを利用して感染リスクを極力減らし、安全・安心の宿泊体験を提供できるように考えていく必要があります。
旅行需要の回復に備えて
ようやく日本国内でも新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が本格的に広まってきました。大きな打撃を受け、苦境に立たされた観光業界に明るいアフターコロナの未来が描けるのか。
コロナ禍において、ワーケーションやテレワークといった新しい働き方や行動様式が生まれました。こうした動きに加え、より移動が自由に行えるタイミングがやってくると国内旅行市場の活発化、そしてその先のインバウンド復活で観光市場はコロナ以前よりも活発な動きを見せることが予想されます。
そうした未来に備えるためにも、今この状況でしっかりとした経営基盤を整えていくことが重要だと考えられます。
フロント業務における本人確認は、まさに宿泊サービスの最初の入り口となります。まずはそこからしっかりとした準備を行っていくのも良いかもしれません。
まとめ
ホテルや旅館、民泊施設で最初に行われるチェックイン。そこでは、宿泊者名簿の正確な記載とその保存を目的とする関連法令が存在します。
そういった法令はきちんと守らなければなりません。
その手段としての本人確認は対面やICTを活用した方法があります。業界課題である人材不足の解消にはICTを積極的に活用することが役立つことと思います。
また、昨今のコロナ禍における感染リスクを考えてみても、ICTを利用したチェックインによって人と人の接触を回避し、感染リスクを極力排除できることも期待できます。
アフターコロナにおける観光市場の回復に備えて、安心・安全の宿泊サービスの提供と新たな付加価値サービスの創出を考えてみてはいかがでしょうか。