日本の新たな観光資源、メディカルツーリズム事例を検証

新型コロナウイルスによる入国規制がほぼ撤廃され、その結果たくさんの外国人観光客が日本を訪れるようになりました。このような方々の、訪日の目的はもちろん観光ですが、最近は観光にもう一つ特定の目的を追加した観光方法を選ぶ人が増えています。

そして、このような観光方法の一つが「メディアカルツーリズム」と呼ばれるものです。今回の記事では、日本におけるメディカル・ツーリズムの現状と事例をご紹介します。

 

メディカルツーリズムとは何?

メディカルツーリズムとは、何らかの医療を受けるために海外に旅行に行くという、「医療」と「観光旅行」を組み合わせた旅行形態です。特に自分の国と比較して、他国に行けば高度でより安全な治療や検診などを受けるために渡航するとき、このメディカルツーリズムという形態が取られることが多くなります。

このようなメディカルツーリズムは、日本ではインバウンド観光客を増加させる一つの方法として、最近注目されるようになりました。しかし、このような医療目的での旅行は、最近になって急に現れたわけではなく、日本以外の国では以前から見られる動きでした。

例えば、東南アジアのタイでは、国策としてメディカルツーリズムを積極的に受け入れる体制を取っており、2016年には280万人の外国人観光客がタイを訪れ、何らかの医療行為を受けています。また、同じくタイではタイ国内にある160以上の病院で治療を受ける外国人に対し、ビザなしで90日まで滞在できるような滞在システムがあります。

また、韓国でも国内の医療機関が医療目的でのビザを申請できるようになっています。特に韓国では「プチ整形」手術を同国で受ける人も少なくないため、こうしたメディカルツーリズムの需要も多いものと思われます。また、韓国のハワイと呼ばれている済州島を東アジアの医療ハブにしようという「済州島ヘルスケア・アイランド構想」に、国費が投入されたりしました。

 

アジア各国から日本のメディカルツーリズムが注目されている理由とは

何らかの治療や検診を受けるために日本を訪れたいと考える人多くは、アジア諸国からの観光客です。以前から訪日観光客の間で、日本のドラックストアで購入できる市販の医薬品や医薬部外品などの評判が高いことからもわかるように、特にアジア諸国で日本の医療は高く評価されていました。

加えて、最近の円安で日本に旅行することが簡単になったこともあり、日本で医療を受けたいと考える人が増えたものと思われます。

特に日本へメディカルツーリズムに来たいと考える人は、「治療」と同じくらい「検診」を目的にしている人が多いことが特徴です。日本人であれば会社などで1年に1回人間ドックをはじめとした検診を受けることが多いですし、各地方自治体でも婦人科検診などを無料で実施しているところも少なくありません。

しかし、こうした検診のための医療システムは、なかなか他の国では見られるものではないのが実情です。そのため、日本で何らかの検診を受けることを目的にしている観光客が増えてきているのです。

 

メディカルツーリズム事例 山形県 のヘルスケア旅

ここからは、日本におけるメディカルツーリズムの事例をご紹介します。山形県の観光会社である山新観光株式会社は2023年2月14日に、2泊3日の旅行商品として、「ヘルスケア旅」という旅行パックを販売すると発表しました。この旅行は、山形県の高級旅館に宿泊しながら、高性能で短時間のヘルスチェックを行うというものです。

検診のメインとなるのがPET/CTと呼ばれる機械でのがん検診です。わずか20分で全身を見ることができ、予想外の部位のがん発見や転移など進行度のほか、腫瘍の良性・悪性判定もできます。ちなみに、この検診を受けた後の結果は、その日のうちに検査を担当した医師が、、検診を受けた人が泊まる旅館を直接訪れて説明することになっています。

近年、日本を訪れるアジア人観光客の中にはリピーターが多く、東京・大阪などの大都市や有名な観光地へは行き尽くしたという人も多いのが現状です。そうした訪日観光客のリピーターは、大都市から離れた日本の地方都市を訪れることも多く、山形県もそうしたリピーターが注目している地域の一つです。

検診の前後には地元食材を生かした有名シェフが経営するレストランのランチや、山形県の温泉を楽しむこの旅行プランの料金は50万円と設定されています。訪日観光客のなかでも、特に富裕層を主なターゲットにしています。

まとめ

もともと日本の医療や検診が海外で高く評価されていたこともあり、来日して治療や検診を受けたいと考える外国人観光客は少なくありません。

しかし、受け入れる日本の病院側にも外国人対応のための人材が不足しているのが実情です。また、インバウンド観光客に対応することで、他日本人患者へのケアや治療ができなくなる可能性を心配する声があるのも事実です。また、現在日本でも医療ビザがありますが、本格的な治療を日本で受けたいと考える外国人にとっては、そのビザを実際に取ることができるのかどうか、という問題がつきまといます。

このような問題を解決しながら、日本旅行で有名な温泉などを組み合わせることが、日本のメディカルツーリズム発展に直接つながる道筋なるものと思われます。