【そうやるのか!】『SDGs』に取り組むホテル・旅館の事例をご紹介

みなさんは「SDGs」がどういう意味か理解できていますでしょうか。

「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で決められた国際社会共通の目標です。近年、SDGsの認知度は徐々に高まり、SDGsを取り入れている企業の割合も増加傾向にあります。

ホテル・旅館業界ではどういった取り組みがなされているのか、具体例を用いてこの記事では「SDGsに取り組む宿・ホテルについて」ご紹介します。

SDGs

2000年に国連のサミットで採択された「MDGs(エムディージーズ/ミレニアム開発目情)が2015年に達成期限を迎えたことにより、新たな世界の目標として定められました。それまでの目標、ゴールは8つでした。

  1. 極度の貧困と飢餓の撲滅
  2. 初等教育の完全普及の達成
  3. ジェンダー平等推進と女性の地位向上
  4. 乳幼児死亡率の削減
  5. 妊産婦の健康の改善
  6. HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止
  7. 環境の持続可能性確保
  8. 開発のためのグローバルなパートナーシップの推進

(外務省ホームページより)

 

MDGsは、先進国による発展途上国の支援をメインとされる内容でした。先進国が目標を決めていたことから途上国から反発があったそうです。それを受け2015~2030年までの長期的目線で、「誰ひとり取り残さないことを目指し、先進国と途上国が一丸となって達成すべき目標」で構成されています。

SDGsの中身をみますと、17の目標、169のターゲット(具体目標)でできています。1つずつ内容を確認しロゴを見ると、貧困や飢餓といった問題から経済成長や人々の健康や暮らしなど、21世紀の世界が抱える問題、課題について挙げていることがひと目でわかります。

169のターゲットは目標をより具体的にした内容です。(省略)

持続可能な開発目標(SDGs)とターゲット – SDGs 持続可能な開発目標

 

  1. 貧困を無くそう
  2. 飢餓をゼロに
  3. すべての人に健康と福祉を
  4. 質の高い教育をみんなに
  5. ジェンダー平等を実現しよう
  6. 安全な水とトイレを世界中に
  7. エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
  8. 働きがいも経済成長も
  9. 産業と技術革新の基盤を作ろう
  10. 人や国の不平等を無くそう
  11. 住み続けられるまちづくりを
  12. つくる責任、つかう責任
  13. 気候変動に具体的な対策を
  14. 海の豊かさを守ろう
  15. 陸の豊かさも守ろう
  16. 平和と公正をすべての人に
  17. パートナーシップで目標を達成しよう

 

持続可能な開発目標(SDGs)_イメージ

会社の財務情報だけを見るのではなく、環境や社会への責任を果たしているかどうかを重視すべきだという提言が国連によって提唱されたことにより、機関投資家(大規模な投資を行う企業・金融機関などの投資家)が事業投資を行う際はEGSを考慮されるようになり、注目が集まりました。

EGSとは環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)課題の頭文字をとったものです。日本の企業では、EGSに基づく非財務情報の開示が求められるようになり、注目の広がりにつながりました。

サステナブルホテル

新たな観光スタイルとして、ホテル業界でも注目されています。

まず「サステナブルツーリズム(観光)」とは、観光地本来の姿や資源を持続的に保てるように配慮した「持続可能な観光」を意味します。

日本でも広がりをみせるサステナブルという言葉はコロナ後の観光でもキーワードになりそうです。交通渋滞、騒音、ゴミ問題、地域住民の生活環境への悪影響を極力減らすことや、地域文化や経済の活性化といった、旅行者だけでなく、旅先に住む人々の生活も豊かになるように配慮した観光全般が、サステナブルツーリズムです。

近年ではBooking.comなどの大手OTAもサステナブルツーリズムを奨励する取り組みに力を入れています。2021年4月22日のアースデイにちなんで発表された、Booking.comの「サステイナブルな旅行への需要の高まりに関する調査結果」では、8割以上が、サステナブルな旅行を優先する意向を示しました。

また、旅行先で、具体的にどのようなサステナブルな取り組みを行いたいかという質問に対しては、「(タクシーやレンタカーの代わりに徒歩や自転車、公共交通機関など)より環境に優しい交通手段を利用したい」、「ゴミの量を減らしたい」、「(部屋を出る際にエアコンや電気を消すなど)エネルギー消費量を減らしたい」という回答が、いずれも7割前後にのぼりました。環境に対するサステナブルな取り組みは旅行先でも行いたいと希望する者が多数派です。

旅館・ホテル取り組み

新たに設立ホテルは環境や地域に貢献するようなサステナブルなコンセプトを持つものも多いです。実際に人や地球、社会にやさしいホテルをみていきましょう。

パークホテル

パークホテル東京では4つの重点テーマを掲げ、SDGsの活動を行っています。具体的な取り組みとしては

企業と社会的価値創造の結びつきの強化、地域共生社会を目標としてアーティスト、障がい者アーティストの活動の場の創出と自立支援、働き方改革の推進、職場ポリシーの浸透、お客様満足度の向上として社内表彰制度(Good Job、永年勤続)社内研修、文化/芸術の勉強会、クラブ活動、社外研修、外国籍スタッフの雇用/日本語研修、環境への取り組みとして植物由来成分使用で環境にやさしいアメニティを用意。

プラスチック製品使用の削減、客室用ミネラルウォーターを紙パック製品で提供、LED化の推進等。4つめの目標として安心・安全の確保食物アレルギー/食事制限に柔軟に対応、全館禁煙、消防・避難訓練など。

SDGs | 【公式】パークホテル東京 | Art Hotel in Tokyo

 

星野リゾート

環境汚染や気候変動、エネルギー利用に関して、星野リゾートでもさまざまな取り組みを行っているようです。

具体例を一部紹介します。

ペットボトル廃止

プラスチックごみ削減に向けた活動のひとつとして「ペットボトルフリー」 に挑戦します。客室でのペットボトル入りミネラルウォーターの提供をやめ、パブリックスペースにウォーターサーバーを設置します。

また、それに伴って滞在中はもちろん、旅行後も日常生活で持ち歩きたくなるようなオリジナルタンブラーを販売し、プラスチックごみ削減の促進にとどまらず、その重要性の認知も広げたいと考えています。

この取り組みは、2019年11月1日に開業するリゾナーレ那須からスタートし、年内をめどにリゾナーレブランド全施設(トマム、熱海、八ヶ岳)にて展開。

ゼロ・エミッション

「ゼロ・エミッション」とは、単純な焼却や埋め立てをせずに、排出するものをリサイクルやリユースにまわすことをいいます。

軽井沢事業所(星のや軽井沢・軽井沢ホテルブレストンコート)は2011年11月にホテル・旅館業界で初めて廃棄物の再資源化率100%、つまりゼロ・エミッションを達成しました。

「ゼロ委員会」の活動は現在も続いており、軽井沢事業所はゼロ・エミッションを達成・維持しています。

ファーム星野

ファーム星野は農産物の生産活動に取り組み、そこから生まれる美しい景観やおいしい食への追及を目指します。第一弾は「星野リゾート トマム」。トマムが位置するエリアは、リゾート開発される前は約700 頭の牛が飼われ、農業が営まれていました。

ファーム星野では、その頃の美しい原風景に戻していき、新鮮でおいしい食を生み出す生産活動に取り組みます。ファームでの滞在や農産物を楽しんでいただくことで、豊かで広大な北海道らしい風景の中でリゾート体験できるようです。

勝手にSDGs

 

黒川温泉

海外では、サンゴ礁を救うため南太平洋にある仏領ポリネシア、ボラボラ島にある114室の高級リゾート「コンラッド・ボラボラ・ヌイ(Conrad Bora Bora Nui)」は、17礁の構築物を沖合の水中に作りました。それはサンゴをはり付かせて再生させる意味があるそうです。

大西洋・西インド諸島のセントルシアにある高級リゾート「ジェード・マウンテン(Jade Mountain)」では、飲料水を含めて、使われる水のすべては、アンセ・マミム渓谷の川から引き込んでいます。

黒川温泉旅館組合設立60周年。サステナブルな温泉地を目指す”黒川温泉 2030年ビジョン”を公開 | 最新記事

出典:世界のホテル・リゾートがサステナビリティーに取り組み始めた:朝日新聞GLOBE+

サステナブルなアメニティ選択

地球環境への影響を考慮し、アメニティのあり方も見直されつつあります。

・安心・安全、心地よい「竹歯ブラシ」MiYO-organic-(ミヨオーガニック)から、地球環境に配慮した、安心・安全な心地よい選択肢として竹歯ブラシが発売。全国の小売店または公式サイトから購入が可能。

生活必需品をサステナブルに 安心・安全、心地よい「竹歯ブラシ」 | TENABLE

地球環境を考え、パッケージでホテル施設として、SDGsや環境問題の取り組みを伝えることができる商品。オンラインで購入可能です。

ホテルアメニティのバイオマス商品

まとめ

日本の旅行、宿泊業界などでは、環境問題や雇用問題への取り組みは行っているものの、SDGsに正対する活動はほとんど実施されておらず、十分に浸透していないこともあるようです。

SDGsが掲げている目標は、短期間で解決できる問題ではなく、10~20年の未来を想像しています。一人でも多くのひとがSDGsに対して理解を深め取り組みについて考えることで意識改革・行動改革につながることでしょう。